急成長新興不動産デベロッパー!-CLI-セブランドマスターズ【企業研究】(2023年度決算まで)

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企業研究

使用しているデータは企業開示を基に、筆者が独自に調査したものです。
また、記事の内容は筆者の個人的な見解も含まれます。
本記事は投資の成功を保証するものではありません。
最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。

こんにちは、バナピンです。

本記事ではビサヤ島やミンダナオ島を中心に不動産開発を行う
セブランドマスターズ【CLI】の企業研究をしています。

  • 売上と利益、共に高成長を続けている
  • 主力の住宅開発が順調。今後も人口増加による需要が期待できる
  • 配当利回りが高く、安定した配当に期待できる
  • PER・PBRが「割安」水準で推移している
  • 債務比率が高めで安定水準とは言えない
  • 流動比率が下落傾向で注意が必要
  • 取引量が極端に少なく、市場の流動性が低いため希望価格で売却しずらい
  • 負債比率は高めですが、その分ROAが高く今は効率的に事業運営が出来ている
    (規模が小さいため、負債に頼らざるを得ない状況であると言える)
  • 主力の住宅開発エリアは人口が増加しており、需要増加が十分期待できる
  • 5~10年など長期的な投資であれば、配当・値上がり益共に期待大

基本情報

企業名セブランドマスターズ
ティッカーCLI
設立日1926年9月3日
上場日2003年9月26日
決算日12月31日
セクター不動産
サブセクター不動産
発行株式総数3,623,451,997
浮動株数796,996,338
浮動株率23%
Webサイトhttps://www.cebulandmasters.com/
PSEhttps://www.pse.com.ph/company-information-CLI/
PSE edgehttps://edge.pse.com.ph/companyInformation/form.do?cmpy_id=668

事業内容

事業地域

セブランドマスターズ【CLI】主な開発エリアはビサヤ島・ミンダナオ島で、
主要な16の都市に拠点を構えています。

不動産販売のほとんどをビサヤ・ミンダナオが占めていることが分かります。
近年ではパラワンにも進出しています。

フィリピン国内の不動産開発を手掛けているため、
海外での事業エリアは現在ありません(2024/6/27時点)

不動産開発

PSEでの設立日は1928年となっていますが、企業の公式HPでは2003年に設立と書かれています。

2003年に約300万ペソの小規模な住宅プロジェクトからスタートし、
2023年で設立20年を迎えましたが、その成長はとても勢いがあります。

セブランドマスターズ【CLI】という社名の通り、セブ市で設立され、
現在ではビサヤ島・ミンダナオ島などを中心に不動産開発をしています。

開発プロジェクト
2023年度

2018年には49件のプロジェクトだったのが2023年には119件にまで拡大しています。

主力は住宅関連で、全体の約75%を占めています。
マンション・戸建て・アパート・高級住宅など幅広く開発を行っています。
大手のデベロッパーとは異なり、ビサヤ島・ミンダナオ島にターゲットを絞った
地域密着型のデベロッパーです。
今後も地域に根差した住宅の開発を主力としていくと予想できます。

プロジェクトの販売率も高い水準で、しっかりと売れている印象です。

完成物件工事中物件着工前物件合計
販売率97%96%63%93%
2023年度

一方、ここ数年でホテルや複合施設などの開発も増えてきています。
主力の住宅開発が順調であり、資金面で余裕が生まれた証拠です。
これらの大型プロジェクトは1回あたりの利益が大きいため、
企業の成長を加速させる起爆剤になります。

タウンシップの開発も手掛けており、
初の開発はダバオのグローバル・タウンシップで現在も進行中です。
2021年にカガヤンのマンレサタウン、ミングラニラのテクノ・ビジネスパークの開発も始まりました。
無事開発が進めば、売り上げにも大きく影響しそうですね。

フィリピン統計局の国勢調査による人口推移です。
主力エリアのビサヤ・ミンダナオの人口が年々上昇していることが分かります。
人口増加に伴い、住宅の需要も増えていくと考えられます。

土地の所有量
2023年度

コチラのグラフはセブランドマスターズ【CLI】が保有する土地の所有面積(開発前)です。

開発と取得を繰り返すことで一定数の土地面積を維持しているようです。
今後も保有量に大きな増減が無ければ、安定した開発が出来ていると言えるでしょう。

逆に大きく減少したり、大きく上昇したりを続けると需給が合っていない可能性も出てきますので、
今後も参考程度に把握しておく必要はあります。

財務情報

売上・利益

売上・利益共に順調に推移しています。
5年平均成長率は、売上高・21.98%、純利益・17.47%と高成長を続けています。
不動産デベロッパーの中では成長率が高く、今注目するべき会社だと言えます。
ただ、今はまだ規模が小さいため急成長出来ている面もあり、
ある程度の規模まで拡大すると成長率が鈍化する可能性もあるで注意が必要です。

利益率も25%前後と高い水準で推移しています。
フィリピン大手デベロッパーの利益率が17%~23%前後ですので、比較的高いと言えます。
地域密着による顧客のニーズに合った経営や、土地の取得単価を低くできている等が
理由として挙げられます。
又、流動性の高い住宅を主力としていることも影響しています。

配当金・配当利回り

不動産セクターの中ではかなり高い配当利回りです。

2018年からでは、普通配当が0.15~0.25ペソ、特別配当が0.03ペソ前後
直近2年の普通配当は0.15ペソで推移しています。
2024年は4月16日に普通配当0.15ペソ、特別配当0.03ペソが支払われています。

配当利回りが上昇しているのは株価の下落が要因です。

2024年4月には優先株を発行しています。
優先株の利回りは、優先株A(4年間)が年利7.585%、優先株B(7年間)が年利8.25%です。

フィリピン国内の不動産投資にハードルを感じている方は、
配当目的で投資することで、不動産投資に近い利回りを実現できる可能性が高いです。
しかし、当然ながら株価下落や減配のリスクはありますので注意が必要です。

キャッシュフロー

この企業の一番の問題点と言っても過言ではありません。
キャッシュフローがひっ迫していると言わざるを得ません。

不動産の取得や開発費用の負担のため、フリーキャッシュが常にマイナスです。
後にも出てきますが、多額の負債でキャッシュを賄っている状況です。
売上・利益共に順調に推移しているため、現状影響は出ていませんが、
売上がなくなると一気に危うくなるキャッシュ状況です。

これだけの業績で株価がなかなか上昇しない原因も、
このキャッシュフローに原因があると私は考えています。

EPS

他の不動産デベロッパーのEPSは1.5~2.0ペソ程度です。

2018年から成長していないようなグラフになっていますが、
2021年に1:2の株式分割を行い発行株式数が2倍になりました。
2018年とほぼ同じ水準までEPSが伸びていますので、
単純に2018年と比較して2倍に成長していることになります。

株式分割をしていなければ、2.5ペソ程度のEPSだったことを考えれば、
平均よりもやや高めと判断できます。

PER・PBR

フィリピン不動産デベロッパーのPERは銘柄によりかなりバラツキがあります。

ざっくりですが、大手デベロッパーで13~20倍程度、中小デベロッパーで2~10倍程度
他のデベロッパーと比較しても低すぎる水準であると考えられます。
今後も売上・利益共に順調に成長するのであれば、
現在のPERは「かなり割安」と判断できます。

PBRについてもかなり低い水準です。

PERとPBRだけを見れば、投資対象としてこれ以上美味しそうな銘柄は無いでしょう。
しかし、市場がこの水準で取引をしている理由もあります。
安易に「割安」という理由だけで投資をするのは危険です。
取引量が少なく流動性も低い銘柄になりますので、投資は長期保有に限定する方が良いと思います。

ROA・ROE

ROEは高い水準ですが、あくまで自己資本に限定した場合の数字です。
セブランドマスターズ【CLI】は債務=借金の額が多いため、あまり参考にはならないと言えます。

一方、ROAは比較的高い水準で推移してると言えます。
負債が多いですが、その負債を効率的に使用して事業運営が出来ていると見れます。
近年は5~6%前後で推移していますが、個人的には8%程度が理想と考えています。

流動比率・負債比率

流動比率は約155%と低めの水準です。
200%程度まで回復してくれると、もう少し安心できると考えています。
このまま低下していき、100%に近づいていくと危険水域になります。
すぐには影響しなそうですが、注意して観察は必要かと思います。

負債比率は2023年で約300%で、安定的な水準とは言えません。
セブランドマスターズ【CLI】で最も注目するべきポイントの1つに、
この負債比率があると言っても過言ではありません。

コロナ禍では約449%と、一般的には改善が必要な水準まで上昇しました。
2022年、2023年は一応の合格ラインまで低下しました。
このままの水準を維持or低下していけば、安定性が増して投資が増えると予想しています。

ただし、まだまだ規模の小さい不動産デベロッパーですので、
大きな開発や高成長を目指すと、どうしても債務に頼らざるを得ません。
売上/利益・事業内容から債務比率を評価していく必要があります。

直近決算ポイント

2023年度

2023年に立ち上げた新規プロジェクトは10件。

戸建て・マンション等一般向け住宅の需要が増加している。
ダバオ初の戸建てプロジェクトは95%が販売済み。
セブ北の中所得者向けの少し高級な住宅プロジェクトも販売開始数日で93%が成約された。

不動産コンサル・投資運用会社のコリアーズ・インターナショナル・フィリピンの発表では、
ビサヤ・ミンダナオ地域の市場シェア22.8%を占めており、
同地域の大手開発業者としての地位を高めています。
2022年の同シェアは18%で、1年で5%のシェアを拡大したことになります。

DEレシオは前年の1.84から1.79倍に低下し、財務状況が改善されました。

顧客に対する売掛金回収率の向上に努め、
延滞率は2021年の5.21%から2023年には3.27%に改善した。

2023年10月、日本の国際開発業者であるNTT都市開発機構と提携し、
総戸数約900の分譲マンションの開発を共同で推進することを発表しました。

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